入浴中の客2人が死亡 温泉施設の元経営者を書類送検 足寄町の温泉施設「オンネトー温泉 景福」

 十勝の足寄町の温泉施設で、4年前までの1年余りの間に硫化水素ガス中毒で入浴中の客2人が死亡、1人が意識不明となった事故で、警察は、施設側が安全対策を怠ったとして、50代の元経営者を業務上過失致死傷の疑いで書類送検しました。

 書類送検されたのは、足寄町の温泉施設「オンネトー温泉 景福」の58歳の元経営者です。
 この施設では、平成26年10月までの1年余りの間に客の男性3人が入浴中に倒れ、このうち足寄町里見が丘の教員、林祐介さん(38)と、さいたま市の吉口昇克さん(64)の2人が死亡したほか、東京・東大和市の54歳の男性が意識不明の重体となりました。
 浴室からは国の基準を大幅に上回る高い濃度の硫化水素が検出され、警察が調べた結果、3人はいずれも硫化水素ガス中毒だったということです。
 昭和50年に定められた国の基準では、温泉に含まれる硫化水素の量を減らすため、お湯の注ぎ口を浴槽より上に設置してお湯を空気に触れさせるよう求めていますが、警察によりますと、施設では浴槽の底からお湯が湧き出る構造になっており、硫化水素の濃度を測るなどの対策もとっていなかったということです。
 このため警察は、施設側が安全対策を怠ったとして、元経営者を業務上過失致死傷の疑いで書類送検しました。
 警察は元経営者の認否を明らかにしていません。

【足寄町の施設とは】
 十勝の足寄町にある温泉施設「オンネトー温泉景福」は、「硫黄泉」の源泉かけ流しの湯が評判となっていましたが、平成26年10月に入浴中の54歳の男性が意識不明の重体となったあと、営業を休止しています。
 この施設では、国の基準に反して硫化水素を含む源泉が浴槽の底の割れ目から直接湧き出る構造になっていました。
 さらに、環境省によりますと、浴室の換気口も高い位置に設けられ、空気より重い硫化水素を十分に換気できない状態だったということです。
 元経営者はNHKの取材に対し、「コメントすることはありません」としています。

【事故後の対策の現状は】
 今回の事故は、国や道が温泉施設の安全基準を見直したり、立ち入り検査などの対策を強化したりするきっかけになりました。
 環境省は、今回の事故を受けて去年9月、硫化水素が発生する可能性のある「硫黄泉」を利用した施設の安全に関する基準を見直しました。
 具体的には、施設に対し浴室に24時間換気ができる設備を設けることや、硫化水素の濃度が特に高いお湯の注ぎ口の付近で濃度の測定を行うことなどを求めています。
 また、道はおととしから道内のすべての温泉施設に対し1年おきに立ち入り検査を行うことを決め、国の基準を超える硫化水素が検出された場合は、必要に応じて営業許可の取り消しなどを行うことにしています。
 足寄町の温泉施設のように硫黄泉を利用している浴槽は全国にあわせて7000あまりあるということですが、環境省がことし行った調査では、このうち67%の浴槽で硫化水素の濃度の測定が定期的に行われていなかったほか濃度が国の基準を超えていた浴槽があわせて50あったということです。
 基準を超えていたのは青森県が21と最も多く、次いで栃木県が11、北海道が6、などとなっています。
 環境省は新たな安全基準が守られるよう、温泉施設への指導などを徹底したいとしています。

【独自の対策とる施設も】
 「硫黄泉」を利用している全国の温泉施設の中には、硫化水素による事故を防ぐ対策に力を入れているところもあります。
 福島市の山あいにある高湯温泉では、過去に硫化水素が原因とみられる死亡事故があったことを受けて、40年以上前から施設ごとに独自の安全対策を実施していて、環境省が基準を見直す際の参考にもなりました。
 その1つが、お湯に含まれる硫化水素の量を減らす対策です。
 高湯温泉にある旅館では、源泉が湧き出る岩場とお湯の注ぎ口の間に木の板を重ねた階段状の水路を設置しています。
 階段状にすることでお湯が空気に触れる時間が増え、硫化水素を効果的に減らすことができるということです。
 また、硫化水素の濃度が特に高いお湯の注ぎ口の付近で毎日2回以上濃度を測定しているほか、換気扇を24時間動かして空気の入れ替えを徹底しています。
 こうした対策をとるようになってから、高湯温泉では硫化水素による事故は1件も起きていないということで、旅館を経営する遠藤淳一さんは「温泉を楽しみにきた客が入浴中に予期せぬ事故に巻き込まれれば、施設側の責任は重い。日ごろから対策を徹底する必要がある」と話していました。

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