川村竜也容疑者、家族と旅行ラスベガス旅行に数百万円の現金…国交省係長がかじった甘い「賄賂の果実」

賄賂の果実を一度かじった公務員は、その味を忘れられず転落へと歩を進めていった。成長戦略として注目されてきたビジネスジェット用の羽田空港内の格納庫をめぐる汚職事件。飲食で始まった国土交通省係長への接待は徐々にエスカレートし、業者持ちで海外旅行に行くまでになった。まじめな性格で知られた中堅係長。順風と思われたキャリアは、一体どこでつまずいたのか。

思い出の家族旅行…その料金は「業者持ち」
ゴルフ、音楽ショー、ショッピング、遊園地…。広大な砂漠に燦然とそびえる米国・ラスベガス。平成26年3月、国土交通省航空局運航安全課前係長、川村竜也容疑者(39)=収賄容疑で逮捕=は妻と子供を連れ、この世界随一の歓楽都市に降り立った。

家族との思い出の旅行。だが、長年航空業界に携わってきた国内での仕事を完全に忘れることはとてもできなかったはずだ。ラスベガスの空に時折響く航空機のエンジン音は、川村容疑者の心をざわつかせていたのかもしれない。

実は、4泊6日の旅行代約90万円は羽田空港のビジネスジェット用格納庫を所有していた航空関連会社「ウイングズオブライフ」が支払っていた。

川村容疑者は今年9月23日、羽田空港内の格納庫の土地の使用料を滞納していたウイングズ社側に便宜を図る見返りに現金約50万円を受け取っていたとして、贈賄側のウイングズ社元社長、金沢星容疑者(61)とともに警視庁捜査2課に逮捕された。

捜査2課は、旅行代もウイングズ社側からの賄賂にあたるとして今月15日、川村容疑者と金容疑者を贈収賄の疑いで再逮捕した。

成長戦略の要も「赤字」続き
ビジネスジェットは22年、政府の成長戦略にも盛り込まれた航空戦略のキーワードのひとつだ。

個人の注文に応じて任意の空港を飛び回るビジネスジェット。アジアからの需要取り込みなどの成長戦略の要のひとつとしてLCC(格安航空会社)などと並んで注目を集めていた。

金容疑者も、医療用ビジネスジェットの普及をうたって、LCCや航空整備、医療などの分野から専門家を引き抜き、ウイングズ社の陣容を整えていた。

ウイングズ社は24年3月、羽田空港にある格納庫の土地使用許可を国交省から得た上で格納庫を別の航空関連会社からビジネスジェット用に購入し、航空関連事業に参入した。

ただ、売り上げは伸びない。25年4月からは格納庫の受け入れを無料にして顧客拡大を図ったものの、売り上げはゼロで赤字に。国交省に支払うべき土地の使用料を滞納し始めた。

これまで羽田空港の格納庫をほかに使用していたのは大手航空関連会社。使用料の滞納は前代未聞の事態だった。

「転職したい」 督促側から滞納容認へ
川村容疑者と金容疑者を深く結び付けたのは、この使用料の督促だった。

「医療用ビジネスジェット事業に参入する」「金策はつけられる。時間をかければ黒字になる」。}

督促に訪れた川村容疑者を金容疑者は言葉巧みに説得した。

いつしか川村容疑者は督促する側でなく、国交省側に使用料の支払いを待つよう説得する側に回っていた。「医療用ビジネスジェット事業に転職したい」。川村容疑者はウイングズ社などに対し、そんな希望すらもらすようになった。

「アイデアに富み、話すと『そうかな』と引き込まれる」。関係者は、金容疑者の人柄をそう説明する。

「金はいくらでもある。飛行機のことだけ考えろ」。別のウイングズ社関係者は金容疑者にそう言われた。だが土地使用料が払えない状況で航空機を調達できるはずもなかった。

あうんの呼吸で癒着進行
「最初はウイングズ社側が誘っていたが、徐々に川村容疑者側もあうんの呼吸で歩み寄るようになった」。捜査関係者は2人の関係をそう表現する。

当初は国交省内などで金容疑者に会っていた川村容疑者は夜の飲食などもするようになる。飲食代は金容疑者持ち。ハードルが下がったところで、金容疑者が持ちかけたのが、現金約50万円だった。

25年12月、「絶対大丈夫」などとする金容疑者に川村容疑者は折れ、自分の銀行口座番号を教え、金容疑者に振り込ませた。名目は旅行のキャンセル代。捜査2課の調べでは、川村容疑者が旅行を予約した事実はなく、嘘とみられる。

転落は、そこから始まったといえる。

川村容疑者はそれ以降、2回にわたって現金計300万円を「転職への支度金がほしい」などといって金容疑者に自ら要求して受け取り、ラスベガスへの旅行までウイングズ社側に持たせていた。

まじめな性格で知られた川村容疑者だったが、いつしか抜けられない賄賂の泥沼につかっていた。

捜査関係者は、癒着が深まり、川村容疑者が業者に絡みとられていった様子をこう評する。「ハードルは一度下がれば、上がらない」

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